キャリア理論家であるスーパーは、成長過程でどのような課題があるかなどの発達理論を展開しています。
これを知ることで悩みの解消やリスクマネジメントに役立てられます。
理論のポイントを押さえ、納得感あるキャリアを歩みましょう。
俯瞰的に自身のキャリアを捉えキャリアデザインをすることで、モチベーションを維持しより良い選択ができるようになります。
最初はキャリア理論における古典的な理論家を紹介いたします。
【現役キャリアコンサルタント解説】ドナルド・スーパー(Donald Super)のキャリア理論とは
スーパーはキャリア理論で最も有名なアメリカの理論家です。
スーパーは個人の発達に「時間」と「役割」があるとしており、ライフスパン・ライフスペースと言われています。
ライフ・キャリア・レインボー
Reprinted by permission of Elsevier. From D. E. Super. (1980). 'A Life-Span, Life-Space Approach to Career Development,' Journal of Vocational Behavior, 16(3), 282-298. Copyright © 1980 by Elsevier; all rights reserved.
前者のライフスパンについては別ページでも紹介しましたが、人生を「虹」にたとえて「ライフキャリア・レインボー」における時間軸を表しています。
レインボーの色=8つの役割(ライフ・ロール)
レインボーの8つの色はぞれぞれ生活における役割(ライフ・ロール)を示しています。
- 子ども
- 学生
- 余暇人
- 市民
- 労働者
- 家庭人
- 配偶者
- 主婦・主夫
レインボー上の円はその役割の有無を示しています。
たとえば労働者(Worker)に注目すると、25歳未満は役割としてはないですが、その後から定年の60歳過ぎまでは丸(◯)があります。
また特徴的なものとして、子どもの役割が70歳から円があります。これは介護などで世話になるということがレインボーからも読み取れます。
レインボー上の円の大きさ=役割の強さ
レインボー上の円の大きさは、その役割の強さを表しています。
たとえば15歳を見ると、子ども(Child)と生徒・学生(Student)に円があるため2つの役割を担っているということがわかります。
また、生徒・学生(Student)の円の大きさに比べると、子ども(Child)の円が大きいため、子どもの役割の方が強いことが示されています。
もちろん人によって役割の大きさは異なりますが、これを意識することで生活上のキャリア(ライフ・キャリア)との両立を意識することができます。
キャリアと言われると”仕事”に重視してしまいがちですが、ワーク・ライフ・バランスという言葉があるようにこれを加味してキャリアをデザインすることが必要です。
アーチ・モデル
変化の激しい時代に適応するために、ライフ・キャリア・レインボーをアップデートしたものがアーチ・モデルです。
理論的にはレインボーとは同じですが、自己を形成する要素としてより詳細に挙げられています。
アーチ・モデルにおいて”要め石(アーチの頂点の石)”は重要な意味があり、自分自身(Self)の意思決定がアーチとして現れているとされています。
2. 6つのライフ・ステージ(マキシ・サイクル)
スーパーによると、人生は6つのライフ・ステージから成っているとされています。
- 成長段階
- 探索段階
- 確立段階
- 維持段階
- 降下・開放段階
- 死
各ステージには年齢が決まっており、それぞれ課題を克服し次のステージに移行(トランジション)します。
2.1 成長段階(0〜14歳)
【好奇心や空想、興味】→トランジション:【能力】
どのような人なのかを考え始めたり、仕事の世界への興味を持ち出して働く意味を理解しようとし始めます。
2.2 探索段階(15〜24歳)
【仮決定】→トランジション:【試行】
学校やクラブ活動・アルバイトなどの知識や経験から興味のある職業が具体的になり、特定化されます。
そして、実際に就職活動を始め仕事を通じて多くのことを学ぶ時期です。
もし仮にやってみてイメージと違った場合は最初に転職を考えるのもこの時期です。
2.3 確立段階(25〜44歳)
【安定、試行】→トランジション:【進歩、不満、堅実】
納得感のある専門分野の中で希望する仕事をする機会を見つけようとする一方、職業的地位の安定を築こうとする時期です。
そして、永続的な地位に落ち着くのもこの時期です。
2.4 維持段階(45〜64歳)
【保持】→トランジション:【革新的、時節に合っている、沈滞、減速】
自らの限界を認めつつ上昇志向の若手から現在の地位を守ろうとすることへ注意が寄せられる時期です。
2.5 降下・開放段階(65歳〜)
【専門家、開放】→トランジション:【退職】
2.6 死
3. 3つのトランジション
各発達段階を克服し次の段階に進むトランジションとして、ミニ・サイクルがあると言われています。
- 成長
- 再探索
- 再確立
各段階でこのサイクルが繰り返されるため、常に再循環(リサイクル)されます。
4. 14の命題
キャリアの開発において、理論的アプローチを14の仮説命題として言語化しています。
たとえば、パーソナリティは人によって異なるということを命題の一つとして提言しています。
これによって、キャリアの開発に理論を当てはめることはできるが、人によって当てはめ方が変わったりする仮説も考えられます。
このように14の価値観としてキャリア・職業適合性について言及されています。
5. 若手のキャリア開発
このように、新入社員や若手社員の多くが2,3年目で転職を考えるのは【探索段階】から【確立段階】へのトランジションにいるため試行するという行動に当てはめてキャリアを見直すためです。
転職を通じて納得感のある職業選択をすることができれば、トランジションを乗り越えて確立段階へ行き新たな課題解決のための行動を起こすのです。
なので、転職を考えていない人は確立段階にいる人もいるため同世代で話すと余計に焦ったりする可能性もあります。
まとめ:国家試験の頻出はマスターしよう
もし知らなければキャリアコンサルタントの「キ」の字も語れないくらい頻出かつ重要な理論家です。
より理解を深めたい方は、私が合格したときに使用した2つの本で理解を深めましょう。
キャリアと聞くと、「やり直しが効かない」や「歩んだ道を変えることは難しい」、「今までの努力がもったいない」と考える方もいらっしゃいます。
しかしご紹介したスーパーは理論の中で、「やり直し」も述べられており、柔軟に対応していくことの重要性も示しています。
あまり硬く考えすぎずにキャリアを考えてみることも必要かもしれません。
そんな視点も持ちつつ一緒にキャリアアップしていきましょう。
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