
ハンセンのキャリア理論はライフ・キャリアとビジネス・キャリアの2つの観点から統合的人生設計を提唱しています。
しかし、複雑でわかりづらく感じる方も多いのではないでしょうか。
誰でも理解できるように理論と具体例をチェックしましょう。
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【現役キャリアコンサルが解説】サニー・ハンセン(Sunny Hansen)のキャリア理論
Sunny Hansen氏(出典:emcreer – WordPress.com)
ハンセンは総合的なキャリアの発達・バランスのとれた人生実現をゴールとし、統合的人生設計(ILP:Integrated Life Plan)を構築した方です。
ライフ・キャリアの意味合いが含まれておりライフとキャリアを連携するという意味合いもある。この概念の中には4L (Love, Labor, Leasure and learn)やジェンダー、文化など幅広い意味合いが含まれている。
1. 統合的人生設計(ILP:Integrated Life Plan)とは
従来のキャリア理論では”キャリア=仕事”と考えられてきましたが、統合的人生設計では”生活の中での仕事”として人生設計することが必要と考えられています。
ハンセンの理論では、仕事の選択において下記2つの特徴があります。
- 個人の選択が人類や環境全体に影響をもたらす
- 個人と組織の変革が結びついている
環境全体とは、仕事以外の家庭なども含めて考えられており、”統合的”という言葉の意味が表れています。
1.1 ”4つのL”とは
統合的人生設計で仕事と仕事以外の他の主な要素として、Lから始まる4つのキーワードがあります。
- Love(愛)
- Labor(仕事)
- Leasure(余暇)
- Learn(学習)
4つのL以外にも、生命や文化、ジェンダー、コミュニティ、考え方、知り方など様々な側面が要素として考えられています。
2. 6つの重要課題とは
そして、ハンセンはライフパターンのための6つの重要課題を提唱しています。
- グローバルな状況を変化させるためになすべき仕事をさがす
- 人生を意味ある全体像の中に織り込む
- 家庭と仕事の間を結ぶ
- 多元性と包括性を大事にする
- 個人の転機(トランジション)と組織の改革に共に対処する
- 精神性、人生の目的、意味を探求する
これらを踏まえキャリアデザインすることで個人の成長だけでなく、コミュニティの改善など周辺環境を巻き込み相乗的に成長するという視点が入っています。
自身のキャリアと言う観点だけでなく、より広げてキャリアデザインを考える観点を与えてくれます。
2.1 グローバルな状況を変化させるために、なすべき仕事をさがす
今までは自分に合った仕事を探していたが、地球規模で直面している問題を解決するために仕事に取り組むということです。
ハンセンが重要と捉えている対象として、環境保全と技術の建設的利用、職場や家庭の変化についての理解、ジェンダー役割の変化の受容、多様性の理解、暴力を減らすこと、貧困・飢餓を減らすこと、人権擁護、新たな知の発見、精神性や目的の探究が挙げられている。
2.2 人生を意味ある全体像の中に織り込む
男女の役割にも焦点を当て、男も女もその人生に自己充足や結びつきを感じられるようにすることが大切とされています。
2.3 家庭と仕事の間を結ぶ
男女が平等のパートナーとして協力し合うことを強調しています。
2.4 多元性と包括性を大事にする
人種と性別、年齢、障害、信念、言語、宗教について様々な視点から物を見ることができるようになることが重要ということが言われています。
2.5 個人の転機(トランジション)と組織の改革に共に対処する
キャリアの選択を個人が決断することと、組織・チームで変化の担い手になろうということも強調されています。
2.6 精神性、人生の目的、意味を探求する
探究する上で自分を理解すること(=精神性)が重要とされています。
3. キャリアカウンセラーの役割
統合的人生設計は個人でのキャリア開発はハードルが高く、キャリアカウンセラーが非常に重要な役割を果たすとされています。
- 失敗にも対処できるように援助する方法を見つける支援
- 一部を重視するのではなく、全体性を求める
- なすべき仕事を見つける援助をする
- 科学的説明でなく、信念と直感、自己超越によってクライアントを知る
- 社会から置き去りにされた人々のためになるような選択をするように援助
- 献身的かつ平等な男女の関係を育て、新たな役割に折り合いをつけていくという課題に取り組む
- 現状を続けるだけでなく、社会を自由と平等へと導くために支援する
4. 現代社会に合わせたキャリアカウンセリングをしよう
ライフ・キャリアを意識したキャリア理論を理解することで、変化が激しい時代に適応した支援ができるようになります。
また、支援に正解はなく自分の考えを持ちクライアントに合わせたキャリア観を持つことも考えさせられる理論です。